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日本最古の「かわいい♡」は比叡山にあり

 前回は、暑くて熱い漢(おとこ)たちの話に終始したので、今回は涼しげに、女性方必見、日本最古の「かわいい♡」という概念が証明できる証拠の品は、比叡山で見つかったという話をしたいと思います。

 宮川禎一という方の論文で発表されたのですが、現在京都国立博物館には、延暦寺から寄贈された「銅製金銀鍍金宝相華文経箱」(上東門院経箱 国宝)というお経を入れる箱(経箱)が保管されています。



 この経箱は、10円玉の表面で有名な宇治平等院の建立と、摂関政治を始めた事で有名な藤原道長(966~1026年)の長女で、一条天皇の中宮である上東門院彰子(988~1074年)が、比叡山横川の如法堂に奉納されたもので、大正12年に出土しました。
 平安時代の金工作品としての技術的、また考古学的な価値は計り知れず、現在国宝の指定を受けていますが、今回の論文には、それ以上に興味深い事案が発表されています。

 この経箱には、表面の刻まれた勇壮な唐風の文様が印象的ですが、箱の蓋を開けると裏面には、日本で確認されている中では現在最古の「和風文様」が施されています。
 宮川氏の話では、この和風文様こそが日本最古の「かわいい」ものだそうです。
箱裏
経箱の裏面 表の唐文様に比べ、スペースが贅沢に使用されている
 
 平安時代当時は、国風文化が隆盛を極め、唐から伝わった男らしい漢字より、日本独特の女性らしいひらがなを使って文を書く事が流行りとなってきた。同じ平安時代に紫式部によって書かれた『源寺物語』の中でも、主人公の光源氏が「今時漢字で手紙を書くなんてダサいわぁ~」てな事を言っているシーンがあるらしい。
 
 漢字に比べてひらがなは、ゆったりとしたイメージを持っていて、男らしく直線的でキッチリした漢文の手紙より、スペースを贅沢に使いながら円を多用したかな文字を散りばめた手紙のほうが、一見して優雅な女性的で美しい。『小倉百人一首』にみられるような大胆な文字の構図もひらがなだからこそ、平安貴族の雅な雰囲気が醸し出されるのだろう。

 この経箱の裏面には、華の文様が贅沢に散りばめられており、まさしくひらがなの構図がそのまま使用されている。しかも、裏面ということで、おそらく経典を納めた彰子とその周りの数人しかその文様を知らなかったことだろう。
 宮川氏はその日本人独特の奥ゆかしさこそが重要で、この人目に付くことの無い和風文様こそが「かわいい♡」の起源ではないかということだ。

裏面のスケッチ

 現代においても、とかく女性は毎日どこでも何を見ても「かわいい♡」と言っているが、その起源が平安時代から続いており、また、我が「お山」出土品で証明されたことを考えると、なかなか感慨深いものがありますな。

 
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やま法師

Author:やま法師
 生まれはおろか、戸籍を尋ねてみても、江戸時代の文久年間までは、とりあえず遡ることが確認できた京都(宇治郡・醍醐)人。当時の身分制度から考えるとそれ以前よりご先祖さまが、此の地に定住していたことは間違いない。
 
 生来よりのきかん坊で、自由奔放な青春を謳歌し、30代後半まで犯罪スレスレの生業で生計を立てるも、ある日奇瑞の仏縁を頂くことで、これまでの諸行を省みて仏に帰依する。

 得度授戒をしていない凡夫、いわゆる一般人のなかでは、日本仏教の母山である比叡山延暦寺に一番近い立場の人間となれたことへ報恩感謝し、その証として、ブログを通じてリアルな比叡山の情報を発信して行きたい。

 また、職権を利用することで、昨今よく目にする京都の観光情報のみを紹介するブログとは一線を画した、歴史的かつ、宗教的な側面を踏まえ、本物の「心の癒し」を目的とした京都並びに周辺の観光情報を紹介して行きたい。

 その一方、趣味のロードバイクを駆使することで、大好物のラーメンを始めとしたB級グルメ等を細やかに発信し、全国より京都へ訪れてくれた方々への一助となりたい。

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